経営者インタビュー事例 

株式会社千葉産直サービス
代表取締役 冨田正和様

安全かつ本当に美味しいものを

【真田】
御社の製品の特徴を教えてください。

【冨田社長】
素材が持っている本来の味が何よりの美味しさであり、それを大切にすれば、添加物など余計なものは必要ありません。当社の製品はすべて化学調味料やたん白加水分解物を一切使わず作っています。
「健康は食から」の気持ちを大切にしながら、産地を明確にされた旬の素材を原料にすることで、安全かつ本当に美味しいものをお届けしています。

【真田】
御社のロゴになっている「産直健美」という言葉に込められた思いとは?

【冨田社長】
産地が見えるもの、旬のもの、より自然に近いものを提供すれば、その美味しさは細胞に染み渡り、身体と心を作っていくという思いです。
「食を通じて灯をともす」という会社の理念のひとつであり、食べることは笑顔と感動を与え、精神や肉体を作り出し、食べることによって気づきもあります。これを肝に据えて食を扱えば決して間違ったことはしません。

 

【真田】
現在のお仕事を始めたのはいつごろでしょうか?

【冨田社長】
若いころは父の会社を継ぐことは考えていませんでしたが、親譲りなのでしょうか、やがて、勤め人ではなく「自分で何かやりたい」という気持ちに…。
26歳で入社した当時、BSE(狂牛病)など食を脅かすさまざまなことが起こり始め、食品業界は激動の時代に突入しました。

【真田】
とても大変な時代に入社されたのですね…。

【冨田社長】
食の安全がより重視され食品表示も厳しくなり、消費者の要望に応えることが難しいと感じることもありました。ですが、このような時代だからこそ必要とされるのは正しい知識だと思い、お客様の声に耳を傾けながら、食に関係する幅広い分野の勉強を続けました。
また、2005年には、当社の主力商品の原料であるイワシの不漁が深刻化するなど、事業を継続させる上で障害となることが重なり…。
こうした流れのなか、今後は新しいことに挑戦し、会社を存続させるための舵取りをしなければと経営を引き継ぐ覚悟ができました。

求めてくださるお客様がいる限り
自分たちはやれることをやる

【真田】
厳しい状況のなかでどのように会社の方向性を決められたのでしょうか?

【冨田社長】
これまで作り続けてきた「とろイワシ缶」は先代が築き上げた主力商品ですが、不漁続きから製造が減少した時期もありました。そのような状況下でもお客様から「また食べたい」というお声をいただくことが何よりも力になったんです。
原料不足や経営不振など、会社がどのような状態だろうが、商品を求めてくださるお客様がいる限り、自分たちはやれることをやらなければならないんだと気づきました。
それからは、イワシ缶だけに頼らず、サバ・サンマなど青魚缶で日本一を目指せるよう「トロ缶シリーズ」開発に力を入れ、将来性があるオンリーワン商品を育てていくという方向性が決まりました。

【真田】
安心安全な美味しいものを作り続けるためには生産者との連携も大切だと思いますが、どのようなご苦労がありましたか?

【冨田社長】
資金力のある企業はよい原料を買い集められますが、私共のような小さな会社は、生産者に思いを伝えるしかありません。「100年残す商品を作りたい」とご協力を求めたところ、「誇りに思える仕事をしたい」と志を高く持っている方と出会うことができました。
こうしてみなさんのご協力をいただきながら、5年ほど経つとトロ缶シリーズがお客様から少しずつ認知されるようになったんです。

日本の和食文化を残すために自分にできること

【真田】
食に対して熱心に取り組まれていらっしゃいますが、冨田社長の根底にあるものとは?

【冨田社長】
日本の和食文化を次の世代に残すために、魚の缶詰が一役買えればという思いです。 近年、魚を料理しない方が増えて家庭で魚を食べるという習慣が減り、外食も含めた魚の消費量が減少を続けています。
日本の和食文化を残すにはいろいろな方法がありますが、自分にできることは食卓に魚料理を並べる、そのきっかけをつくることだと思っています。

【真田】
たしかに…。昔と違って食も欧米化していますし、まずは魚に親しんでもらうことが和食文化を守ることにつながるのですね。

【冨田社長】
当社では、魚缶を使ったレシピもお伝えしながら、魚料理に親しんでもらえるように情報発信していますが、当社の缶詰だけを買ってほしいというのではなく、旬の魚が店頭に並んでいたら、ぜひ買って食べていただきたいんです。
まずは、日本の和食文化が消えないように食育に取り組むことが重要だと考えています。食育の根本はお米であり、お米を食べるという文化を大切にし、多くの方が和食を見直すようになれば、自然と食卓に魚が出るようになる。社会のために何かをするということは、回りまわって自分に返ってくるものだと思うんです。

【真田】
なるほど…。世界でも高く評価されている日本の食文化を守ることは、私たちが考えていかなければならないことであり、食に携わるみなさんはそれをリードする存在ですよね。

【冨田社長】
生産者として食を語れる人たちが集まり、和食の文化を正しく理解して、それぞれの食品の立ち位置を考え、活動していく。
そして、大事なことは次の世代に残すこと。自分ができなければ次の世代につないでもらえばいい。引き継いでもらうにも、そのための準備が必要ですから20年30年かけてしっかり準備しなければなりません。

【真田】
冨田社長が食に関心を持った始まりはどのようなことでしょうか?

【冨田社長】
母が忙しいなかでも、毎日手作りの食事を出してくれたことかもしれません。子どものころはありがたみを感じていませんでしたが、振り返ってみるとそこが始まりなのかも。
若いころは食べ物に無頓着で体調も悪かったのですが、会社に入ってからは食に対するスイッチが入り、現在はとても健康です。説明している自分が健康体でなければ食の安全を訴えても説得力がないですからね。
20代中ごろから歯医者以外、病院や薬のお世話にもなっていませんので、食と健康は本当に密接な関係だと身を持って証明しているんです。

目指すはお客様を感動させる領域

【真田】
近年、力を入れていらっしゃる農場限定のこだわり素材とは、どのようなものでしょうか?

【冨田社長】
農場限定の豚・鶏・鴨を使った精肉加工品やお惣菜です。農場を限定して仕入れ自社工場で製造しワンランク上の商品をご提供しています。
豚は1頭買し責任を持って加工していますし、鶏は締めた後すぐに生で仕入れ、フランス鴨は国内で唯一、種鴨から生み育てている農場からの仕入れと、厳選された食材だけを使っています。 また、お互いの信頼関係を深めるために定期的に農場を訪れることも。
私と同じく、無理をせず地に足つけて堅実に仕事をする方たちなので、よい関係を築けているのだと思います。

【真田】
同じ志を持つ生産者さんたちとこだわりの商品を一緒に作り上げているということですが、そのこだわりは使用する調味料にも?

【冨田社長】
使っている調味料はすべて把握しています。消費者に安心安全な食品を提供することにつながりますから、使われる原料や調味料、すべてに責任を持つことは当社の生命線なんです。
それに、製造過程での熱の入れ方やタイミング、塩の配合においては0.1パーセントでも味が変わってしまうので、製造過程では感性も大事にしています。
目指すのは、お客様から「感動した!」と言っていただける領域。プレッシャーも感じますが、最善を尽すための原動力にもなっています。

【真田】
現在、経営者として力を入れていることはどのようなことでしょうか?

【冨田社長】
理念を共有できるスタッフを増やすことです。
それには、まず、理念に共感してもらえることが大事だと思い動いていたのですが、どうやらカラ回りだったようで…(笑)。
若いころからお世話になっているパートさんから「理念よりも先に働く環境を整えることの方が大事なのでは?」と言われ、ガツンとやられました…。よい仕事をしてもらう環境を作るのが先で、理念を共感してもらうは後からだと…。
なるほど、そうかと気づかされると同時に、私はスタッフに育てられているんだとつくづく感じましたね。 現在は、就業規則を改めるなど、子育て中のスタッフも働きやすい環境を整えられるように試行錯誤しながら取り組んでいます。

お取り寄せサイト「産直健美」のブランディングと
地域の都市型ショップでモデルケースを目指す

【真田】
ネットショップも始められたそうですが、どのような通販サイトを目指していらっしゃいますか?

【冨田社長】
同じ思いを持った生産者の理念がさまざまな角度から伝わるように、よりよい販売方法も考えなければと通販サイトをオープンいたしました。今後は、地力をつけるためにも、同じ志の商品を集めたブランディングの確立に力を入れていきます。
当社のウェブサイト「産直健美」ではご自宅用やご贈答品用の他にも、内祝いにもちょうどよい量のパッケージもご用意しています。みなさまから「お取り寄せの魚缶だったらここ!」と言われるようなサイトに育てたいですね。

【真田】
今後、事業として新しく取り組みたいことはどのようなことでしょうか?

【冨田社長】
近い将来、千葉駅近辺に厳選した農家さんからの野菜を並べた都市型の直売所や、また、地域を限定せず全国から一定基準のものを集めたセレクトショップを作りたいと考えています。
これまで地域の方々のご協力をいただきながら開催を続けてきたマルシェも、ここにつなげられればと。店舗は大きく拡げるつもりはなく、自分たちの目が届く範囲にとどめるつもりです。

【真田】
それは農家さんや地域の方々のためにもすばらしい取り組みですね。

【冨田社長】
目指すのは地域の方々が求めているものを作り販売する、全国のモデルケースになるような店です。千葉県で生まれ育った私は、地元にはよいものがたくさんあることを知っていますから、それが消えてしまうのがもったいないという気持ちが強いんです。
こうした取り組みは小さい規模でも続けていくことが大切であり、その結果が地域のためになればと思っています。

株式会社千葉産直サービス
〒264-0031 千葉県千葉市若葉区愛生町146番地の1
TEL ・ 043-254-7791(代表)
FAX ・ 043-254-7793
http://www.e-tabemono.net/

通販サイト「産直健美」
http://www.sanchoku-kenbi.jp/